2012年10月31日水曜日

教員が別の大学に移るということ

以前、「割愛」について書きましたが、今回は、大学の教員が別の大学に移るということそのものについていくつかのパターンを考えます。

1.地方国立大学→都市部大手の私立大学
よく聞くパターンとして、また、人文社会系の教員たちには、非常に人気の高いパターンとして、地方にある国立大学の教員が都市部の大手私立大学に移るというものがあります。
理由は様々でしょうが、まずは給料が全然違います。地方の国立大学教授と都市部の大手の私立大学教授では、年収が400万円以上違ったという例を知っています。
また、研究する環境として(特に人文社会系は)都市部のほうが有利という面もあります。

2.地方国立大学→旧帝国大学
また、地方国立大学から旧帝国大学に移るケースもあります。
研究環境の改善(研究設備や研究費)や、母校への凱旋といった意味合いがあります。
もちろん、旧帝国大学から別の旧帝国大学に移るということもあるでしょう。

3.地方私立大学→別の私立・国立
私立大学の半数近くは定員割れの問題を抱えていて、経営難の状態とも言われている現在、地方の私立大学からは優秀な人材がどんどん流出しているという現状があります。
そこにしかとどまることのできない教員は別として、高い研究能力を持つ優れた若手の教員は旧帝国大学や都市部の大手の私立大学に引き抜かれています。

これからはますます大学教員の流動化が進むと思われます。

大学教員の公募(必須条件について)

大学教員の公募については、以前の複数の記事でも詳しく触れてきました。
最近では、便利なウェブサイトで公募情報を手軽に入手することができるわけですが、その際、応募条件の欄でよく見かける表現に「~であることが望ましい」というような表現があります。
今回はその点に注目。

例えば、「博士の学位を有していることが望ましい」や「大学ので教育経験を有していることが望ましい」などですね。
大学教員の採用などについて言及されているいくつかの書籍や記事でもすでに指摘されていることですが、この「望ましい」は、「必須である」と捉えるべきです。

院生やオーバードクターが溢れている現在、ブランド力ある大学にはもちろん、地方の小規模私大の公募にもたくさんの応募があります。(大学によっては応募書類が100通を超えることだって珍しくありません。)
このような状況では、「~であることが望ましい」をクリアできていない応募者たちは、その時点でまとめて除外されるということも多いのです。
ですから、応募者としては、「博士の学位を有していることが望ましい」と公募書類にあれば、「博士の学位を持っていなければならない」と考える必要がありますし、「大学ので教育経験を有していることが望ましい」とあれば、短大や専門学校ではなく、あくまで「大学ので教育経験を有していなければならない」と考えたほうが良いでしょう。

人気の大学・強い大学

 今回は、大学の人気、強さについて。
 現在、日本には約770もの大学が存在しています。
 その770の大学をいろんな評価基準でランキング化したものがあります。
 そのうちのひとつに、「志願者数」による大学の人気、強さを示したものがあります。
 志願者数が多いということは、受験者に選ばれているということです。
 そのランキングの上位は次のようになっています。

第1位・・・明治大学(4年連続)
第2位・・・早稲田大学
第3位・・・日本大学
(リクルート進学総研調)

 1位は4年連続で「明治大学」。
 施設の充実や立地、高い教育力、就職の強さなどが評価されています。
 3位までに入っている大学はいずれも都市圏の大手私立大学ですね。
 在学生も多いですし、そこの所属している教員の質も高いといっていいでしょう。
 (ちなみに、明治大学や早稲田大学は教員の給与も全国トップレベルです。)

 大学進学率が微増を続けているとはいえ、少子化の影響を受け、定員割れに悩まされている大学は少なくありません。(私立大学の半数近くは定員割れしているともいわれています。)
 そんな中、いかに受験者に志願してもらえるかはとても重要なことで、大学のブランド力にもつながるものです。

 ですから、多くの大学(特に私立大学)では、広報に力を注ぎ、学生に選ばれる大学づくり、運営を目指しているといってもいいでしょう。

2012年10月29日月曜日

大手の私立大学教員の年収

 以前の記事で大学教員の給与について書きました。
 今読んでいる、『大学教員採用・人事のカラクリ』という本にも主要な大手私立大学教員のモデル年収が紹介されていました。
 それによると、早稲田大学、慶応大学、明治大学、立教大学、中央大学、法政大学、関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学の2006年度のモデル年収平均は以下のとおりです。

35歳准教授・・・927万円
40歳准教授・・・1,066万円
50歳教授・・・1,318万円
55歳教授・・・1,366万円
60歳教授・・・1,380万円

 やはり都市部の大きな私立大学教員の年収は高いですね。
 ちなみに、この本の最初に紹介されている哀しきB教授の年収は450万円ちょっと。

 同じ大学の教員でも、どの大学の教員かによってかなりの差があるのです。

2012年10月24日水曜日

割愛について

この時期になると、教授会の議題に「割愛」の承認なるものが登場します。
大学に勤務する研究者を別の大学が採用する場合、割愛願いを出します。(最近では出さないところもあります。)
割愛をお願いするとは、大学教員の人事特有のもので、「優秀な人材で惜しいでしょうが、私どもにお譲りください(手放してください)」というお願いをすることです。
形式的になっている場合が多いのですが、たまに、この割愛の承認を拒否するということも起きるようです。
移りたい大学から採用されることが決まっても、勤務している大学を出るということは、そう簡単なことではないのですね。人間関係は複雑ですので。
最終的には辞表を提出して退職し、別の大学に移れば良いのですが、中には、割愛承認がなければ、内定を取り消すということもあるようです。
職業選択の自由、若い研究者の将来などのことを考えれば、いろいろ大変なのでしょうが、割愛を願われた大学側は潔く承認して欲しいものです。

2012年10月23日火曜日

大学教員公募の情報をどのように得るか

 大学の教員も公募によるものが増えてきたことは過去の記事でも触れたとおりです。
 では、その公募情報はどのようにして得ることができるのでしょうか。
 各大学がHPなどで公募情報を開示していたり、関係機関に文書を送付すること等が挙げられますが、今日では、「研究者人材データベースJREC-IN」という便利なサイトで大学教員を含む研究職の公募を手軽に確認することができます。
 勤務地や分野、職種などを限定して検索することができますし、キーワード検索も可能です。
 研究職を目指す大学院生や大学の移動をたくらんでいる若手研究者にとってこのサイトは非常に便利なものでしょう。
 私もたまにどんな公募があるのか、キーワードで検索してみます。
 分野や勤務地を指定して自分のメールアドレス宛にマッチングメールを送ってくれるサービスまであります。
 広く優秀な人材を募集したい大学側にとっても、研究職目指す個人の利用者にとってもこうしたサイトが存在することはよいことだと思います。
 私が勤務する大学でも教員を募集する際にはこのサイトに情報を載せるようです。

2012年10月7日日曜日

大学教員の公募について(年齢について)

以前の記事で二度ほど教員の公募・面接について書きましたが、今回はちょっと違う角度から。
今回のテーマは「年齢」です。
最近ではコネではなく、ちゃんと実力を問う真の「公募」が増えていることは以前言ったとおり。
ただ、そのようなガチ公募でも研究力や教育力、実績、人間性などの優劣だけで純粋に決まるわけではありません。
応募者の「年齢」が重要なポイントとなることも少なくないのです。
募集の段階で「教授」を募集するのか、「准教授」なのか、あるいは「講師」か、はたまた「助教」、「助手」なのかを明示していることが多いのですが、これは採用する側がある程度、どれくらいの年齢の教員が欲しいかという思惑の現れともいえるのです。

とはいえ、「准教授」や「講師」での募集では、求められている年齢が予想しにくいものです。
30~40代であることが多いでしょうが、場合によっては、50代かもしれませんし、20代かもしれません。
普通、内部のそうした「本音」を応募者が知ることはできません。

募集側の欲しい年齢層を推し量るひとつの手としては、応募部署の現職教員の顔ぶれ、そのバランスを知ることです。
年齢層に偏りがあればおのずと・・・。

もちろん、年齢など選考にまったく影響しないという場合もありますので、あしからず。

2012年10月3日水曜日

大学教員のボーナス

ブログの過去記事でもっともアクセス数が多かったのは、「大学教員の給料・給与・年収」でした。
そこで、今回はボーナスのおはなし。
結論から言うと、これも大学によって大きく異なります。

最近では、経営難でボーナス0の大学も少なくありません。地方の小規模私大ではよく聞く話です。
しかし、私の周りの研究者の方々は平均して3~4ヶ月分は出ているようです。(見栄を張っている可能性もありますが。)
やはり大規模な私立大学の支給額はよく、MARCH(明治、青学、立教、中央、法政)レベルでは、今でも6~7ヶ月分は出ているようです。(知り合いの何人かの事例だけが根拠ですが。)

国立大学法人は下降線を辿り、今後良くなるとも思えません。

待遇面では、大学間でも「勝ち組」「負け組」の二極化に拍車がかかっているのです。

大学教員の講義数

さて、大学教員のしごとのひとつに「教育」があります。
教育活動の主たるものは、90分の講義を行うことです。
この90分の講義1回を1コマと呼んだりします。

では、大学の教員はこの講義を週に何コマほど担当しているのでしょうか。
これは、給与と同様、大学によってかなり異なります。
また、同じ大学、学部であっても、年齢や職格によっても異なりますので、一概には言えません。

私が直接聞いたことのある最多コマ数は週22コマ。
月~金の5日で単純に割ると、1日4~5コマということになります。これでは、研究をする時間がないのでは。
一方、少ない人で週2コマ。
当然、講義がない日が大半です。
ちなみに私は現在週5コマ担当しています。

卒論指導や大学院生の面倒、他大学での非常勤などもありますので、単純にコマ数だけで「教育活動」の評価をすることはできませんが、やはり大学間の差は大きいですね。